mitururu
このアルバムは決してお涙頂戴アルバムではないのに、不思議となんどか涙が出そうになる。
元春は具体的な事柄を直接、歌うことは少ない。何故なら、その事柄がわかるのはその当事者以外にはいないから。でも、もちろん元春はひとりよがりなアーティストではない。出来事を、抽象化や物語ることにより、より深く本質を突く内容となっている。
陳腐な言い方だが、最高の「癒しアルバム」になっていると思う。コヨーテバンドのいきいきとした演奏は本当に生きている感じだし、ギターやピアノの旋律はグッと心に染み込んでくる。なんど聴いても飽きないし、聴き込む程に深みを増し、自分なりに勝ってな解釈が生まれてくる。
「世界は慈悲を待っている」は政治的な視点と、慈悲又は欲望という言葉が印象的だ。アルバム全体を象徴する曲だと思う。元春のビートニクスとしての覚悟や祈りが込められている。曲のたびに歌唱も異なり、「スーパーナチュラルウーマン」では元春の野性的でざらついた独特な歌唱が快感だ。「詩人の恋」ではなんともウェットで繊細なボーカルに目頭が熱くなる。アルバムタイトル「ZOOEY」とは、元春のことを慕っていたミュージシャンのニックネームらしい。
「メメント・モリ」(死を想え)‥このアルバムはそんな言葉が折り込まれた「生」への強い希求アルバムだと思う。