月と太陽の輪の中で
西 幸恵

 2014年3月に惜しまれつつ休止になったNHK-FMのラジオ番組、「元春レディオショー」に端を発し、ツイッター世界に生まれた佐野元春ファン同士のつながり。群れるのは苦手だけど集うのが好きな私も、日々この中で交信している。つながりは見えないけれども元春が好きというのがわかる。

 『BLOOD MOON』発売日前日から聴いたファンたちの感想ツイートは熱かった。元春を聴くと感想を誰かに無性に語りたくなってしまう。それはなぜだろう。難しいことは言えないけど曲が今までの自分、今の自分、そしてこれからの自分に向けて歌われているように感じるからではないだろうか。今までもそうだった。ただ、今回は少しヒリっとした痛みを伴っていた。何か突きつけられている気がした。

 今回、久しぶりにアナログ盤を購入して、盤をひっくり返して聴くという動作をして、A面を「月SIDE」、B面を「太陽SIDE」と名づけた。これ以上の曲順はないな、と。

 月は一定のリズムで満ち欠けして私たちを穏やかに照らしてくれる。太陽は強い光を放ち無防備にしてると日焼けもする。が、やがて夜が訪れる。最後の曲「東京スカイライン」のマンドリンの音色に自分の生まれ故郷の東京の夜景を重ね合わせて目を閉じてみるのだ。今の住まいの田園豊かな地には高い建物が少なく月が見えている。そしてまたA面へと誘うのであった。ぐるぐると輪をつくっている。レコードそのものだな、なんて思った。

 私と同世代のコヨーテ・バンドの面々がエッジの効いたプレイをしてくれているのも単純に嬉しい。2000年以降にライブにたくさん行くようになって感じているのは元春がライブアクトにおいてもどんどん若くなっていること。MCにも驚かせられたり失笑したり(すみません)。「こうでなければいけない」というものをかなぐり捨ててからが人生は面白いと思っている。これからも元春には踊らせてほしい。寄り添うのでなく一緒に成長していく、そんなイメージです。大人といわれる歳になっても成長することはやまない。元春を聴き続けるかぎり。