ハートランドからの手紙#121 |
掲載時:2000年7月 掲載場所:20周年アニバーサリー・サイト 'eTHIS' 掲載タイトル:ネット配信スポークン・ワーズ・ライブ「Summer of 2000」に寄せて |
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佐野元春です。 夏ですね。元気でお過ごしですか? 20周年アニバーサリー・サイト'eTHIS' は、みなさんからの支援を受けて現在、「夏のターム」を迎えることができました。どうもありがとう。今年一年の限られた期間ではありますが、残る「秋冬のターム」もよろしくお願いします。 また、去る7月27日、eTHISのプレゼンツによるネット・ライブ「Summer of 2000」。このイベントに参加してくださったみなさん、どうもありがとう。 詩と言葉を音楽的にリーディングする 'スポークン・ワーズ' のライブ。僕のパフォーマンスをインターネットを通じて鑑賞していただくという試みでした。 内容は、僕の詩集「ハートランドからの手紙」と「エーテルのための序章」から、いくつかの詩を選びリーディング。演奏は、ホーボーキング・バンドからKYON、パーカッションに里村美和が参加してくれました。 今回行われたネット・ライブ「Summer of 2000」は僕のキャリアでいうと、80年代中盤の「エレクトリック・ガーデン」、90年代前半に発行していたマガジン「THIS」の流れを汲むものとなりました。 このネット・ライブを開くにあたってみなさんからの質問で多かったのは、「リーディングの場としてなぜインターネットを選んだのか?」ということでした。 それには二つの答えがあります。一見矛盾しているのですが、ひとつは、多くの方達に見てもらえる、ということ。もうひとつは、'詩 - スポークン・ワーズ' という表現は、基本的にひとりを相手にした表現が理想的だということにあります。 いってみればラジオ番組に似ています。聞いている人は大勢であるけれど、DJが話しかけている相手は「君」ひとりだ、といった構造。 これに、リーディングを体験しているひとたちが互いに連絡を取りあうことができるというネットならではの利点が加われば、きっとそこに意味のあるコミュニティが生まれるのではないかと思いました。 '詩 - スポークン・ワーズ' のいちばん魅力的な点は、ある個人へのとても親密なアプローチが可能なことにあります。ネットでの展開を始めとして、この'詩 -スポークン・ワーズ' というアート・フォームの可能性について、これからも僕なりのやり方で追及していきたいと思っています。 ここまで述べて、僕は一点どうしてもみなさんに伝えたいことがあります。 今回のネット・ライブ「Summer of 2000」において、サーバーの故障によりライブを見る事ができなかった方が多数いたという報告を受けました。 せっかくこの時間を楽しみに待っていてくれたみなさんをがっかりさせてしまったと思います。これまでにも何回かライブのネット配信を行ってきていて、過去のケース・スタディを参考に慎重に行ったつもりなのですが、このような結果となってしまい僕も残念でなりません。 そこで、当日見ることができなかったみなさんのために、ライブの模様を収録した映像をeTHISサイト内で公開しようと思います。契約レコード・メーカーの理解のもと、どうにかオン・デマンドによる公開が可能になりました。公開の日時はまもなくお知らせしますのでしばらくお待ちください。 ネットを通じたこのような試みは試行錯誤の点も多く、表現としての完成を見るにはまだまだクリアしなければならない障害も多いと痛感しています。ネットでできることへの追及にゴールはありませんが、eTHIS事務局とともに僕はもうすこし試みを続けていこうと思っています。今回のネット・ライブ「Summer of 2000」につながらず悔しい思いをした方もどうか失望せず、また次の機会にトライしていただければと思います。 ありがとう。 Dive in, have fun and get in touch!!!!!!! 良い夏を。 00.7.28 佐野元春 |
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