ハートランドからの手紙#147
掲載時:2002年9月
掲載場所:'Plug & Play '02' コンサートツアー用パンフレット
掲載タイトル:意は蒼く

今年の夏は暑かった。
今まで体験したことのない暑さだった。

友人と筑波の茶庵に行った。
数寄屋造りが美しい草庵風の茶室だった。

原木の皮をのこした柱や土壁に、シンとした音がしみ込んでいた。

そこは、異常な暑さの外から隔絶された「真空」だった。

無防備な僕は、無の音に圧倒されそうになって、寄り掛かる杖をさがした。
しかしそんな杖などどこにも見当たらなかった。

蝉時雨の外。

こんな夏を何度体験してきたのか?
そしてあと何回体験するのか?

つくばいを使い、席に入る。

手元のお茶が腕のなかで宇宙を描いている。
小さな光の精霊が緑のユニバースを渡ってくる。

待合いからの、ほのかな桃の香りを感じる。

迷いがあって
しばらく行方不明だった

空は簡素でいい
満たされない思いもいい
言葉は足さなくていい
もうだいじょうぶだ。

そして探求は続く
心のままに
意は蒼く


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