ハートランドからの手紙#153 |
掲載時:2003年6月 掲載場所:ネットCDショップ 'プー横丁' ウェブサイト 掲載タイトル:プー横丁開店30周年に寄せて |
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佐野元春です。 プー横丁開店30周年!30周年、と聞いてただひたすらリスペクト、です。プーさん、そしてお店を支援する皆様に、心からのおめでとうをお伝えしたいと思います。 さて、「私の好きな3枚のアルバム」。 誰れにでも多感な10代というものがあり、そこで触れ、心が動いた音楽は、成長しても尚、胸のどこかで、正しく、美しく、鳴り響いているものであります。 そんな多感な頃に聞いて、僕が不覚にも涙した曲。恥ずかしながら告白します。 1. Randy Newman / Marie (from the album 'Good Old Boys') 2. Roberta Flack / Jesse (from the album 'Killing Me Softly') 3. Tom Waits / Muriel (from the album 'Foreign Affairs') 共通しているのは、この曲を作って唄っているシンガーたちはみんなピアノ弾きだ、ということです。で、メロディーが美しく、言葉がシンプル。感情が極力抑制されている。 また、3曲とも人の名前が歌のタイトルとなっています。マリーさん、ジェシーさん、ミリュエルさん、歌の内容も当然、彼達に向けられた愛の歌となっています。 マリー、最初に会ったとき君はプリンセスに見えたよ。 ジェシー、ベッドに穴が空いたみたい。戻ってきてちょうだい。 ミリュエル、俺の悪い噂は気にするな。また会える日まで元気でいてくれ。 せつなく、哀しい三つのストーリー。これを聴いた10代の頃は、恋愛の経験といったってまだ子供じみていたはずなのに、今思えばなぜ、こんなオトナの唄に、泣けちゃうくらい心が動いたのか、不明。 同時に、ソングライティングっていうのは奥が深く、これは一生かけて究明していく価値があるぞ、と確信したのは事実。 10代の頃、僕自身、この3曲に会っていなかったら、どうだったか。会うべくして会ったのか。僕と曲が磁石のように引きあったのか、わからない。 ひとつ確かなのは、この3曲を聴いたとき、僕はひそかに、シンガーソングライターになろう、と決意したことだ。誰とも違う言葉とメロディーと歌い方で、回りの友達をあっといわせてやろう、と、そう決意したんです。 それから僕は、ずっとこうして歌を書いては唄うことを続けている、という訳です。 またどこかで会いましょう。 佐野元春でした。 |
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