ハートランドからの手紙#177
掲載時:2005年2月
掲載場所:宣伝用チラシ
掲載タイトル:佐藤奈々子写真集「The Bird」に寄せて

光の小旅行 -SKY TRECKING
佐野元春

ヒトがヒトと殺し合う世界なんて
僕にはとても理解できない

薄いメタル製の肌を脱ぎ
僕は僕が元いた場所に戻っていこう

僕には鳥のような羽はないけれど
翔び方については誰よりもよく知っている

自分が何者なのか気にならない
自分が借り物なのかわからない

誰か僕を分子レベルに分解してくれないか
そしてあの光の彼方でまき散らしてくれ
死者を見送るように
死者を見送るように

口ずさむ一編の詩さえあれば
たとえどこにいても君を待つことができる

僕の内なる天真爛漫な獣が
朝に雨を唄い、夕に月を射る

廃屋となった玄関が
夢の終わりを告げている

天国や地獄などない

それはそれで美しいことが
また僕を撃つ


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