ハートランドからの手紙#202 |
掲載時:2007年4月 掲載場所:MWS 掲載タイトル:MusicUnited.について |
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そもそも我々は独立していた。別に集う必要などなかったのだ。しかしある日閃いた。我々のこれまでの道程で得た戦利品をおのおの持ちよって、一度俯瞰から眺めてみてはどうかと。声をかけた相手は三人。深沼元昭、山口洋、藤井一彦。賛同を得て我々は握手をした。 僕が書いた曲のリリックを割り振ってそれぞれ四人で唄った。それぞれがソロを取るところもあれば全員でハーモニーを取るところもある。誰かが歌えばそれに誰かが応えるという仕掛けだ。レコーディングは終始楽しかった。共感の伝達がそこにあった。良い景色がそこにあった。 ロック・ミュージシャンは若いうちに稼いでおけと言う。年を取ってからじゃだれも見向きもしなくなるから、と言う。そうかもしれない。しかしソングライターは一度ソング・ライティングを始めたらよっぽどの理由がない限り止めることはできない。いくつになろうがなるまいが、売れようが売れまいが、唄いたい言葉が溢れてくると唄わずにはいられない。ソングライターとは、そういう生き物なのだろう。 同志の連帯、なんて今や時代錯誤も甚だしい。あらゆるモノゴトの動向に、必要以上にお金の事情が絡んでいるかのような今。連合はあっても連帯はむずかしい今。僕らが見ているあのメインストリームとは、真のメインストリームなのか。二重三重のトリックを我々は見破ってしまいたい。そして笑ってしまいたい。 ある目的を持って書かれた曲とそれを求めている聴き手との幸福な邂逅を求めて。今ある仕組みに変革の口笛を。いつも、いつでも、いつまでも、MusicUnited. text=佐野元春 2007 DaisyMusic |
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