ハートランドからの手紙#71
掲載時:93年12月1日
掲載場所:AAA'93横浜ロックンロールコミット用パンフレット

AAA'93横浜ロックンロールコミットメントに寄せて

こんにちは。佐野元春です。
最近僕は夢をみました。自分がエイズにかかった夢です。夢の中でのその体験はとてもひどいものでした。始めは自分がエイズにかかったのだと認めたくない気持ちもあって、冷静にしていました。ところが、だんだん、まわりの友だちたちは僕を避けるようになってきます。僕の愛しい人でさえ、何か今までの態度とはちがいます。そのとき僕はとてもさびしい気持ちになりました。

相手のことを信じなければ自分が死んでしまう。エイズというのは、私達人間の信頼の関係まで壊そうとしています。けれどももし、誰も信じられないような、そんな世界に生きるとしたら、それはきっと病気よりももっと耐えられない世界かもしれません。

エイズの人を疎外したり、またむやみに隔離したりする。今までにも何度か、そうした悲しいニュースに接してきました。しかしそれは決して賢い方法ではありません。

このにくたらしくてまたやっかいなエイズというウイルス。僕は現代の社会の中で、どうにか、この小さなウイルスと、「ともに生きてゆく」という、また、「ともにやりくりしていく」という、そんな発想でもって、このエイズの問題に接していきたいと、僕はそんなふうに思っています。


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