ハートランドからの手紙#73
掲載時:94年4月
掲載場所:書簡

こんにちは。元気ですか。この手紙を書いている今は春。新しい事とかつての事とが出会う季節。来る者と去る者とがあいさつを交わす季節。今年もまた、いつも通る桜並木をくぐってゆく。みなさんはどんなふうに過ごしていますか。

昨年末から続いた「ザ・サークル・ツアー」も、全国のファンのみんなに支えられて、無事、もうまもなく終わろうとしています。今回のツアーはずっと不思議な感覚に包まれていました。いつもならツアーというと自分が引っぱってゆくものなのですが、今回ばかりはファンのみんなが僕を引っぱってくれたような、そんな気がしています。この間、直接に間接に、応援のメッセージを送ってくれたみなさんに感謝しています。ほんとうにどうもありがとう。

今回こうして僕が手紙を書いているのは、もうひとつとても大事なことを伝えなければいけないからです。僕の大好きな仲間。ザ・ハートランド。今年の活動を終えた後、僕らはそれぞれの道を行くことに決めました。ザ・ハートランドの結成は1980年。オリジナルメンバーのダディ、阿部吉剛、小野田清文、伊藤銀次、古田たかし、西本明、その後、ギタリストは2人交代して、横内タケから現在の長田進に。
その間アディショナル・メンバーとして、里村美和、東京Be-Bopのボーン助谷、石垣三十郎。彼らはレコーディングにライブに、僕の音楽をしっかりと支えてくれたすばらしい仲間たちです。

僕らは話し合いました。そして決めました。爽やかなものです。僕らはともにある決意をもって出発し、全力で何か大事なことをやりとげ、そして今また元に帰ってゆくのだと、そんなふうに思っています。
同じスポットライトを浴び、同じ感動の夜を体験し、楽屋ではお互いの成長を感じあいながら、僕らはずいぶん長い間、一緒に時を過ごしてきました。喧嘩ひとつなく、そう、みなさんには笑われるかもしれませんが、一言で言えば、ザ・ハートランドは「仲良し音楽兄弟」だと思っています。
よくバンドの解散というと、とかくつまらない理由がつきまとったりするものですが、心配しないでください。今回のことが僕らの友情を壊すようなことでは決してないことを、僕らはしっかりと確認したからです。

ザ・ハートランドの現メンバーと演奏できるのも後残り数回。僕もメンバーのひとりひとりも、残された演奏を心から楽しみたいと思っています。今年の夏あたり、ザ・ハートランドが出発した街、横浜のどこかで、記念のワンナイトスタンドをやりたいと思っています。そのときにはぜひみなさんも集まってください。

  We'll meet again
  Don't know where
  Don't know when
  But ! know we'll meet again some sunny day
  Keep smiling true just like you always do
  Till the blue skies makes the dark clouds fade away
  Some sunny day
  We'll meet again

【THE BYRDS/We'll Meet Again】

限られた文面ではとうていすべては語り尽くせないのですが、もし一言と言うならば。
僕は心からザ・ハートランドに恋をしていました。

1994年4月9日 佐野元春


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