ハートランドからの手紙#92
掲載時:95年11月
掲載場所:Moto's Web Server

ポエトリー「ホーボ・キングからの伝言」
佐野元春

人生は短い
ましてや、じっと待っていることに耐えられない君や僕は
時々どうしたらいいかわからなくなることがある

余計なお世話かも知れないけれど
正直に言えば、君のことを
あまりマシンの前に引き止め過ぎちゃいけないと思っている

だから、
このページに重たい飾りつけはいらなかった
地図に 雑音に 腐るほど圧縮された画像
画面がすっかりできあがるまで
僕らは、なぜバカみたいにじっと画面を見つめていなければいけないのか

そんな様子を想うと、
僕はたちまち屋根のてっぺんから飛び降りたい気持になってしまう

ゴージャスなメイクアップはやめにした
ここに掲示してある中に、もし君に必要なものが見つかったら
さっさとダウンロードでもして
さよならと言ってほしい

ポルノを探している? 
残念ながらアドレス違い
あいすいません

買い物がしたい?
他をあたってください
ここでは何も売ってません

神様を待っている?
幸福な待ちぼうけ
ここにはもういない

正直に言えば
こいつは、君の人生を狂わせるほど衝撃的な何か
と いうほどのものでもないんだ 便利だけどね
そう、ただ便利だと言う他はない

灰が燃えても灰でしかないような
そんな手紙が届いた日
君はポストの前で うなだれるしかない

世界が、無意味な言葉のストッキングに覆われてゆく
世界が、味のない音の壁に包まれてゆく
世界が、眠たげな画像のコーンフレークに埋もれてゆく

明日においては ますます
込み入ってゆく世界
入り組んでゆく個人

どんなに離れていても
飛び込んで、参加して、連絡を取り合おう
でもひとつだけ忘れずにいてほしい

部分は部分
決して全体にはなれないね

されど
我等、ひとつなり


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