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文・写真：及川 毅 |
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20:20、チャット参加者、30人に。画面はずっとステージを引きで捉えているが、トリを務める面々はまだ現れない。MIPS、全員心なしか静かである。 20:23、客席からコールが起こる。楽屋裏にもひと気がなく、今までで一番静やかである。チャット参加者、32人。 20:24、客席のコールが手拍子に変わる。香川、「珍しい応援のしかただよね」。 |
20:26、遂にHobo King Band Featuring 佐野元春、登場。客席が一気に歓声で沸き返る。チャット上でも、それまでのような客観的な姿勢から一転、文字で歓声が沸き起こる。コメントもチェーンになってゆかない。散発的な歓声が、メッセージが、どんどん書き込まれる。20:32、「がめ」さん、「友達が今、病院で見てますよ、モバイルで。さっき、見れてるってメールもらったよ」。 20:33、２曲目は、今までTV・ラジオなどでも流されていない、未発表の新曲だ。……つまり、この曲は今、この中継で初めてメディアに流されたということになる。MIPSにとって、佐野元春にとって、そしてなによりインターネットというメディアにとって、まさに快挙である。 チャットでは「YAMA」さんが、「ドラムも写して」との希望。それはスイッチャーの今井に伝えられるが、あいにくとドラムの小田原をピンで捉えた映像がなかなか来ない。元春を捉えた引きのショットの、ドラムセットの奥に映る小田原の映像が送られる。 20:44、MIPSスタッフ至福の時である。席に着いてマシンや機材に向かっている者も、交代待機中のものも、皆全員本部室に集まって、画面を熱く見つめ、ソースやサーバのモニター音響に耳を傾けている。私語はない。皆それぞれリズムを取りながら、ノって作業についている。今井はあからさまにノリノリで、実にテンポよく絶妙のスイッチワークを見せる。遠藤も、普段HTMLの書き換えをしている時とは別人のようだ。小踊りしながら、部屋の中をリズミカルに歩き回っている。 20:45、遠藤が席に着き、HTMLファイルを書き直している。終演後の設定変更の準備だろうか。 20:47、チャット上の書き込みペースはMIPSも、参加者もそう頻繁ではない。皆、演奏に夢中なのだろう。チャットでは「ヤマノフ」さんから「MIPSはもう端末離れたのかな」。昨日、終演後ステージで全員が紹介されたとき、一時チャットからMIPSメンバーがいなくなった時と同じ雰囲気を感じたのだろう。森本が返す「いますよ、全員」。 20:52、演奏終了。「ちょっと外した」今井が言う。スイッチングのことだろうが、なかなかどうして、ノリノリでしたぜ、旦那。 客席からはアンコールが起こっている。ステージのライティングも落ちず、客電も灯らない。遠藤も、端末の前で小さくアンコールをしている。 20:54、ライブの興奮もさめやらぬ中、突然、楽屋裏カメラの撤収要請が来た。PA機材運搬用の箱の上に置かせてもらっていたのだが、現場の撤収作業で移動させるため、解放して欲しいとのことだ。急いで機材をおろし、代わりのマシン置き台に移し、カメラを３脚にとりつける。 ステージでは、アンコールの「悲しきレイディオ」が始まっている。 |
21:56、やはり来た。MIPSメンバーに、昨日のようにステージ袖に集まって欲しいとのことだ。楽屋裏マシンの再セッティングを急ぎながら、向かえる者から徐々にステージ裏に走る。21:00、再セッティングも終え、MIPSメンバー、全員がステージ袖へ。スモークが流れ、圧倒的な音量を体で感じながら、メンバーはHobo King Bandの演奏と、元春の歌に聞き入っていた。 21:05、アンコールの演奏も終了し、ステージの面々は皆楽屋へと向かって行く。そして、MCの佐野氏が再度ステージに上がって行く。そして今日も、MIPSのメンバーがコールされた。相変わらず、どこかにぎこちなさを感じさせながらステージに整列する一同。ただ、昨日よりも何か満足げである。客席の反応も、暖かい歓声だ。今野がデジタルカメラで観客を撮影する。ステージから満座の観客を撮るなんて、めったにないことだ。今井が弾けたように手を振る、心底嬉しそうに。他の皆も、客席に向かって手を振る。その姿を、佐野氏が大切な仲間として優しげに見ている。そして拍手に包まれながら、彼らはステージを駆け去っていった。 |
21:08、MIPSの面々が本部室に戻ってくる。カメラに映るステージは既にライティングが消え、サスペンションが降りてきている。観客も帰りはじめ、この２日間のライブイベントの終了を映像で伝えている。これで、MIPSのインターネット中継も終了となる。 誰ともなく、締めの言葉が発せられる。「お疲れさまでした！」。 そして、本部室いっぱいに拍手が響いた。 |
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