◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ MIPS  PRESENTS ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
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◆◆◆◆    ノージのSmall Town Talk      ◆◆◆◆
◆◆◆◆                     ◆◆◆◆
◆◆◆◆  佐野元春 and The Hobo King Band   ◆◆◆◆
◆◆◆◆   〜 THE BARN TOUR'98 Newsletter 〜   ◆◆◆◆
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                     Vol.9 <1998.4.03>

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★ノージからのごあいさつ★

 終わっちゃったよ〜。終わりましたよ。3月29日の大阪フェスティバル・ホ
ールにて、“The Barn”ツアーは無事ファイナルを迎えました。もちろん、こ
の後は佐野さんインフルエンザで順延になった東京・神奈川の2公演があるの
ですけれどもね。

 大阪では“The Barn”プロジェクトのしめくくりということで、アメリカか
らジョン・サイモンさんとガース・ハドソンさんも来日。3日間の滞在でリハ
ーサルと本番を終えて、時差ボケのまま慌ただしく帰国したガースさんはちょ
っとお気の毒でしたが。ステージ上の彼らと、本当に素晴らしい夜をご一緒す
ることができてよかった!!

 大阪レポートはまた次回にゆっくりお届けするとして。遅くなってしまった
東京・渋谷公会堂でのライブ・レポートをあわてて書いています。なんかね、
ツアーが終わるとね、ボーッとしちゃうのと仕事がたまっちゃうのでメールが
遅れがちになってしまいますわ。
                             (4月3日)
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■ CONTENTS -----------------------------------------------------------
■Back To Tokyo(3月23日・渋谷公会堂)
■2倍返し!?(3月24日・渋谷公会堂)
■楽屋拝見フラッシュ!!
■在庫一掃企画“みんなで歌おう”
■メールください
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■Back To Tokyo(3月23日・渋谷公会堂)--------------------------------

 メンバー楽屋では、The Hobo King Bandが本番前の準備を始めている。どこ
となく、ピリピリした雰囲気。メンバーが、なべマネに「開演は、何分?」と
訊ねる。いつもはテキパキ答えるなべマネが、困った顔でうつむく。
 6時40分。予定開演時間を10分も過ぎている。ステージのほうからは、佐野
とPAチームがサウンド・チェックを続けている音がまだ聞こえている。

「“渋公〜ッ”って音だよね」

 リハーサルを終えたメンバーたちが言う。
 わたしも、渋公ライブの経験値は他地方の会場と比べて非常に高いのでわか
る。なんか、どこかモワ〜ンとした雰囲気がつきまとう。だけど、この会場は
収容客数のわりにすごく狭く感じられる、いわば“巨大なライブハウス”のよ
うな親しみを感じさせる。独特の音響も、渋公らしい密室感覚をかもしだして
好きだ。このホールが持つ、独特の魅力。とりわけ東京で育った人間にとって
は、武道館と同じくらいの重みを持つ“ロックの殿堂”という印象がある。

 佐野が、ここ数年の東京公演で中野サンプラザや厚生年金会館ではなく渋谷
公会堂にこだわり続けるのも、たぶん“渋公”という場所が放つ独特の魅力に
よるものだと……推測しているのだが、どうなんだろ。

 とはいえ。この場所でのベストな音響に対する答えは、なかなか見つからな
い。佐野の理想とする音と、PAチームの思惑。いつも、どこか歯車ひとつが
食い違っている。
 リハーサルのステージに立ったとたん、佐野はいつもより緊迫した表情にな
った。

 ホームグラウンドである東京で、ひとつケリをつけたい。

 そんな彼の思いが伝わってくる。

「佐野さんがステージ上であんなにイライラしている顔見たら、どんなに頑張
っても演奏だってテンションさがっていくよ。当然だけど」

 以前、トラブル多発で佐野がキレまくったライブが終わった後。帰りのタク
シーの中で、メンバーのひとりがため息まじりに言った。

 佐野の苛立ちはメンバー全員の苛立ちであり、PAチームの葛藤は“佐野元
春&The Hobo King Band”というプロジェクト全体の葛藤だ。

 しかし、ツアー後半に入ってから状況は少しずつ変化してきている。ファイ
ナルを迎えるまでに、これまでの試行錯誤がひとつの実を結びますように。祈
るような気持ち。

                     ****************************

 結局、ステージは30分以上も遅れてスタートした。
 その遅れをわびる気持ちをこめて、なのだろうか。
 ステージに立った佐野は、オープニングから崖っぷちギリギリまでテンショ
ンをあげている。

 この日は、あの名古屋2日めの「僕は大人になった」から始まる曲順メニュ
ーが組まれた。1曲めは“お客さんも僕らもウォーミングアップのためにね”
( by 佐野)ということで「僕は大人に〜」が選ばれたわけだが、佐野の身体
は充分にあったまっているみたいだ。
 しょっぱなからゴォーゴォーと火を吐くゴジラと化す佐野に、メンバーもぐ
いぐいと引きずられていくのが見える。

 続いての2曲め「君を探している」で、佐橋&KYONのギターが炸裂する。佐
橋とKYONのギター・バトルの加速ぶりは、このツアーにおける重要なチェック・
ポイント。“腕きき”とか“名人”とかいう形容を超えて、この2人が一緒に
並ぶことによって特別な空気が生まれる。互いが触発しあって、それぞれが見
せる“いい味”が全開なんだなぁ。このバンドでしか聞けない、ものすごく粋
な味わいが……。

 そして3曲めの「ヤング・フォーエバー」で“待ってました”の歓声があがる。
この曲が、すでにスタンダードになりつつあることをしみじみ痛感する瞬間だ。

                     ****************************

 何かひとつ、どうしてもうまくいかないことがあった時。そんな日の佐野は、
誰もが想像できないような、思いがけない類のエネルギーを炸裂させる。

 この夜も、そんなことになるんじゃないかって気がしていた。開演時刻がど
んどん遅れていくなかで、不安を感じながらも期待していた。

 この“The Barn”ツアーをインサイダーとして観察することで、発見したこ
とがある。

 レコーディングやライブ・プロジェクトを、制作やビジネス面まで仕切る佐
野元春は“完璧なプロデューサー”という印象が強いけれど。少なくともツア
ー中の彼は、時にプロデューサーという視点を完全にフッ飛ばして、ロックン
ローラーとしての野性と本能だけで突っ走っていく。まわりのものは何も見え
なくなってしまう。

 そして、そんな瞬間の佐野はモーレツにカッコいい。
 誰がなんといおうと、こんなカッコいいロックンローラーはいない!! と思
わせる。

 佐野が常に完璧をめがけていく過程で、無意識のうちに“完璧”へと到達す
る瞬間。
 それを、いつも待っているような気がする。彼自身の思惑とは矛盾してしま
う“期待”なのかもしれないけれど。

 新人・ベテランに関わらず、ビジネスマン然としたミュージシャンが増えて
いく昨今だけれど。ずっと昔からビジネス・サイドにも深く関わってきた佐野
の、結局は“ロックンロール”であるがゆえにビジネスマンになりきれない誠
実さが好きだ。それは、他のHKBのメンバーたちにも共通している。
 音楽がなくちゃ生きてゆけない、音楽でしか生きてゆけない。器用そうでい
て、めっぽう不器用な男たちの集まりだからThe Hobo King Bandが好き。

 東京の観客の、おそろしく熱狂的なノリに圧倒されてしまう。
 開演が遅れてジラされたぶんもエネルギーになっているのか、とにかく全国
的に見てもいちばん歓声がデカい!!
 会場が一丸となってのコールとか、曲中の“合いの手”(?)とか。ものす
ごい。女性ファンも多いはずなのだが、とことん男っぽいノリが客席を満たし
ている。

 このノリ、この日の佐野とHKBはずいぶんと助けられたはずだ。ステージ
も客席も、押しの一手。どちらも一歩も退かない。
 これじゃ、どんどんテンションあがっていくはずだわ。

                     ****************************

「今日は、けっこうMCも満足」

 と、終演後に佐野は言った。
 確かに、この夜の彼はよくしゃべった。実によくしゃべった。
 とはいえ“アルマジロ日和”の時のように、曲の合間に説明をするような固
いトークではなくて。前半『The Barn』コーナーは、MCは少な目でグッとク
ールにきめる。あのアルバムの流れを、おしゃべりでさえぎってしまわないよ
うに。そして後半で客席がリラックスしてくると、次々と“名言”連発でコミ
ュニケーションをはかる。

 ちょうど「サムデイ」を演り始める前、この10数年間のファンたちの表情の
変化を話しながら“成長”について話している時なんか……。どうやら佐野は、
途中で何を言ってるんだか自分でもよくわかんなくなっちゃったようだった  
(泣)。

佐野「なぜ僕がそんな話をしているのかって、思ってる? 僕がステージの上
でわけがわかんなくなってると、そう思ってるんだろ?」
客席「ドーッ(←爆笑)」

 このライブを見たマスコミ関係者が「佐野さん、ホントに変わったよねぇ」
と言った。こーゆー時、前は客席で“ドーッ”とは笑えなかったものね。後で
思い出して、クスクスッと笑っていたのに。佐野元春の謎MCの愉しみを、遂
に“ご本人”とわかちあえる時代がやってくるなんて!! こんな幸せなことは
ありませんよねっ、マニアのみなさま。

 そんな陽気なやりとりから始まる「サムデイ」。
 そう、この曲はもう“禁じ手”でも“儀式”でも“切り札”でもなくなって
いる。佐野元春とThe Hobo King Bandにとっての“大切な曲”のひとつである
ことは変わりないけれどね。

 アンコール。
「みんなが楽しいと僕も楽しいよ。何歳になったか忘れたけど、でも、でも、
でも……ま、いーか。不景気だろ? どこの街に行っても」

 もう、ずぇーったいにワケわかんなくなっています。

 でも、ひとつだけ確かなことは……佐野自身も“ワケのわかんなくなってい
る自分”を楽しんでいるみたいだってこと。

 ザ・ハートランド時代は、彼はいつでも“長男”としての責任を負っていた。
 自分だけワケがわかんなくなっちゃうことを楽しむ自由や余裕は、それほど
なかったんじゃないかと思う。でも今は、楽しい時は思いきりブチ切れても安
心。誰かが、そんな彼をちゃんと見守っているから。そのかわり、誰かがブチ
切れた時には見守ってあげなきゃいけないけど。

「何かガックリしていることがある人は、一緒に歌おう。生まれつきハイな人
はそのままでいいよ」

 と言って、彼が歌い始めたのは「悲しきレディオ」メドレー。
 ツアー前半ではミッチ・ライダー&ザ・デトロイト・ホイールズの“デトロ
イト・メドレー”の中に組み込まれていた“元春メドレー”を、「悲しきレデ
ィオ」を母体にしたメドレーへと組み替えたものだ。

                     ****************************

 今宵も、いい感じで燃え尽きた。
 音響問題に関しては、たぶん佐野は満足しきってなかったと思う。けれど、
ライブが終わった後の彼はとてもうれしそうだった。だから、メンバーもうれ
しそうだった。
 その夜のステージ上で、彼らが何をいちばん“大切”にしていたか。それは、
終演後の彼らの顔を見ればわかる。
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■2倍返しぃ!?(3月24日・渋谷公会堂)--------------------------------

 余談ですが。前日のアンコール「悲しきレディオ」におけるメンバー紹介で
のこと。
 佐野は、トミーを紹介する時にこんなふうに長い説明をくわえた。

「このツアー中に、彼は子供が生まれた。でも、彼が生んだわけじゃない(←
あたりまえだ)。名前も決まった、何だっけ……(←トミー、こそこそと耳う
ち)。うん……ここだけの秘密にしておこう」

 本当だったら、その後に「ベース、井上富雄!!」と名前が紹介されて。で、
トミーがベンベベンとベース・ソロを弾くことになっているのだが。

 次の瞬間、佐野さんは……

「ドラームス!! 小田原豊!!」

 そのままドラム・ソロに突入。トミー、ソロ・パート忘れられちゃいました。

 で、翌日の24日。楽屋で、みんなが昨日のライブについて話していて誰かが
「佐野さん、忘れてるんだもーん」と言ったら……。佐野元春、目が点になり
ました。

「え、なに? オレ、忘れてたの?」

 覚えてませーん。みんな「さすがっ、佐野さんっ」と大笑い。
 しかし、佐野さんの説明によると“ワケがわかんなくなっていた”のではな
く……

 名前を聞いた→言おうと思った→しかし、待てよ。こういう公なところで子
供の名前をゆってよいものか?→んー、どーしよう→やっぱ言おうか→待てよ
→んー→ぐるぐるぐるぐる→うーんうーん→ドラームス、小田原豊!!

 という図式だったそうだ。

 この夜、同じくメンバー紹介でのトミーのベース・ソロはすごかった。
 いきなりチョッパー奏法でブチ切れまくってたもん。
 あとでメンバーに“あんた、せんきゅうひゃくななじゅうねんだいの人!?”
とゆわれておりました。トミー、前日のぶんもこめて2倍返しのソロでした。
 それを盛り上げる佐野さんも、トミーのソロを指して異常に盛り上げており
ました。前日のザンゲ、か!?

                     ****************************

 この日、オープニング・ナンバーは「ヤング・フォーエバー」。
 いきなり歓声の壁がそびえ立つような熱気に包まれた初日に比べると、もっ
とラフな雰囲気。ライブハウスのノリに近いというか、観客がそれぞれ自分の
ペースでライブに参加しようとしているような。でも、テンションは前日より
も高いように思える。

 KYONが佐野に、「どこにでもいる娘」と「誰も気にしちゃいない」を続けて
演る曲順にしてみないかと提案した。
 それは、前日にライブが終わった後で彼と佐橋が話していたことだった。
 なるほど、いいかもしれない……と佐野。
 ツアーが始まったときには「どれも動かせない、完璧な曲順」だと思ってい
たのに。だんだんと曲が姿を変えて成長をしていくなかで、新しい席順が生ま
れてくる。

「これからだんだん、ストーリーが生まれてくるはずだから」

 ツアー初日を終えた時の、佐野の言葉を思い出した。

「どこにでもいる娘」は、このツアーでもっともスピリチュアルな輪郭を描く
曲だ。
 ウッドストックでレコーディングされた時、この曲はソウルを与えられた。
そしてそれがツアーの中で少しずつ熟成していき、やがて新しい意味を持ち、
信じられないくらい高い場所まで上りつめていった。
 コンサートにおける位置的には、前回“フルーツ・ツアー”での「サンチャ
イルドは僕の友達」に近いのかもしれない。どこかスペーシーでサイケデリッ
クで、けれど他のどんな曲よりも聞き手の内面に近い親密さを感じさせる。深
い内省と大いなる宇宙とが交錯していく、スピリチュアルな高揚感。
 けれど「どこにでもいる娘」は、もっともっと特別な曲だ。『The Barn』も
今回のツアーも、すべては佐野とThe Hobo King Bandの面々が共に作りあげて
きた作品だけれども。この曲だけは、佐野だけのための歌であって欲しいと思
う。佐野だけの曲を、他のメンバーたちがそっと包み込むような……そんな歌
であって欲しいと思う。

 曲順が変わることで聞き手の気分も変われば、演奏者の気分も変わる。静謐
な2曲にはさまれる形で演奏されてきた「マナサス」が、別の場所に置かれる
ことで見せた新しい表情。「どこにでもいる娘」と「誰も気にしちゃいない」
の次に演奏されることによって、「マナサス」は新鮮な勢いを得た。

「この曲の、ロックンロールな面が前よりもグッと出た気がする」
 と、KYON。

 続く大阪公演では、ジョン・サイモンがやって来る。
 彼に、いつか自分たちのステージを見せたい。佐野もバンドも、ずっとそう
思っていた。ウッドストックで完成した『The Barn』アルバムが、さらに“成
長”を続けていることを彼はどんなふうに感じるだろう。

                     ****************************

「もし知っていたら、一緒に叫ぼう。歌うんじゃない、叫ぶんだ。なぜなら外
は不景気だから。不景気な時は、好きな歌を大きな声で歌うに限るんだ。そう
だろ?」

 アンコールで「ガラスのジェネレーション」を歌い始める前、佐野は言った。
 この“叫ぼう”というのは、ツアーが始まってから初めて聞くフレーズだ。

「今日はこのフレーズが気に入ってるんだ。歌うんじゃなくて、叫ぶんだ!!」

 なんか、すごくホントに気に入ってるみたい。
「一緒に歌おう」と言いかけたあとに「あ、“歌おう”じゃなくて“叫ぼう”
だ!!」とわざわざ訂正したりして。

 彼が“叫ぼう”というフレーズを思いついたのは、どの瞬間だったのだろう。
でも、とにかく今夜のライブが彼に“叫ぼう”という言葉をひらめかせたこと
は間違いない。

 歓声どころではなく“雄叫び”に近い声に包まれた客席にとって、それはも
う願ったりかなったりの提案。みんな、一緒に叫ぶ叫ぶ叫ぶ。

「インフルエンザで休んでしまったんだ。だから、今夜は2倍返しだ!!」

 義理堅い!!

「もう、時間が何時だか、僕は知らない!!」

 舞台の袖では、たぶんスタッフが腕時計をにらみながら泣きそうな顔をして
いることだろう。けれど、もはや佐野の辞書に“時間”という文字はないみた
いだ。

「悲しきレディオ」メドレー。

 エンディングで、ギターを抱えた佐野は力いっぱいジャンプした。
 それは、このツアー最高値を記録した……。わたしの記憶によれば。

                     ****************************

 最後の最後にきて、またもやバンドは新しい局面を迎えている。

 たとえば小田原豊。23日には、彼は調子全開とはいかずにモンモンとしてい
た。けれど。そのぶん、24日は佐野に負けずに“2倍返し”の嵐だった。

 HKBが向かっていく“グルーヴ”に対して、最後まで確信を持つことができ 
なかったのが小田原豊だった。しかし他の5人の背中を見ながら、それぞれが
様々な形でバランスをとりながら試行錯誤するのを誰よりもハッキリと目撃し
てきたのも小田原だった。

 その彼が、ツアー終盤になってからは、ぐんぐんと物凄いパワーで他の面々
を引っ張っていく。いわば“管制塔”の役として、メンバーたちを常に真剣な
表情で観察していた時期もあった。けれど、最近のアニキは表情がぐっとやわ
らかい。ずっとニコニコしている。ニコニコしながら、とびきり刺激的なビー
トを繰り出してくる。

 終演後に、アニキに向かって黙ってVサインを送った。
 そしたら、アニキは超満足気にニンマリして言った。

「キミも、やっとわかったねッ!! このバンドの“次の段階”で、オレがやる
べきことが何かってことが。オレもわかっちゃったよー(笑)」

 佐橋、トミー、アキラ、KYON、小田原、そして佐野。ひとりひとりが、この
ツアーの中で自分がHKBでやるべき“新しい仕事”を見つけてきている。
 ツアー終盤で、まだまだ“新しい発見”があることは驚くべきことかもしれ
ない。けれど、考えてみれば“次の段階”に向けての助走はすでに始まってい
る。フルーツ・ツアーの時も、そうだった。彼らは、ツアーの中で“次のこと”
を探しているんだから。
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■楽屋拝見フラッシュ!!------------------------------------------------

 ツアー中盤にはなかなか会えなかったオフィシャル・カメラマンの岩岡吾郎
さんが、名古屋から一緒です。ご存じの方も多いと思いますが、岩岡さんはデ
ビューの頃からずーっと佐野さんのジャケットやライブ写真を撮り続けてきた
巨匠です。

 昔話をしているうちに、佐野さんと岩岡さんは『ビジターズ』の頃のニュー
ヨーク撮影話を始めました。

佐「真冬のコニー・アイランドで撮った写真、気に入ってるんだ」
岩「あの時ね、あまりの寒さに指が凍っちゃって。シャッターも押せなかった
んだよ」
佐「なのに僕は走り回ってて、それを岩岡さんが追っかけてきて……」
岩「佐野さんについてくのは、ホントに大変(笑)」

 当時の写真で、まだまだ未発表のアウトテイクがたくさんあるらしいのです
が……。いつか見せてもらいたいですね。

 ちなみに岩岡巨匠はタンゴおやじとして知られております。なんたって、今
や“タンゴ協会”の理事っすよ。で、昨年とうとう吉祥寺で“ヘリオトロープ”
というタンゴ・カフェバーをオープンしました(武蔵野市吉祥寺南町2-29-8 
電話0422-47-2108)。正午から夜中0時までやってます。HKBのメンバーも、
ツアーが終わったら遊びに行きたいなとゆってます。お近くにお住まいのかた
は、ぜひ!!

                     ****************************

 23日、楽屋には小さなHKBが出没!!

 センパイに似ている少年が!! と思ったら、今年から中学生になるセンパイ
のご長男でした。佐野さんのライブには小さい頃から何度も来ているだけに、
楽屋でも落ち着いて静かにお弁当を食べたりして、堂々たる貫禄です。

“センパイより大人っぽいね”とか話していたら、「センパイって誰ですか?」
と訊かれてしまいました。
「それはね、お父さんのことなんだよ〜」
 と、アニキ。
 その後、ご長男はすっかりHKBの中に溶け込んでしまい、しまいには「小
センパイ」と呼ばれておりました。

 それなのにね、佐野さんたらね、この日もメンバー紹介で「天気のいい日曜
の午後、公園に行ってみてほしい。きっと彼がいるはずさ。パンをくわえてね」
とセンパイを紹介するんですよぉぉぉ。

 佐野さんも、紹介しながら西本Jr.の顔が浮かび「んー、そんなことゆって 
いいんだろうか。アキラにも父親の威厳が……ッ(笑)」と悩んだそうなんで
すが。結局ゆっちゃいました。

 その後、終演後の親子の会話。

息子「おとうさん、公園でパン食べてるの?」
父親「や、あれはね、あれはね、むー……きさーん(←誰に向かってゆってる
のか?)」

                     ****************************

 この2日間、渋谷公会堂ではある極秘プロジェクトが進められておりました。
 それは“田町探索隊デビュー・シングル、ジャケット写真撮影会”。

 ちなみに田町探索隊とは、KYON・コロ・トミーの3人ですよ。念のため。

 どこからデビューするかって、そりゃNohji's Rock'n Roll Shop内“Nanoo 
レーベル”に決まってますがな。デビュー曲「田町で1H」は、実はレコーデ
ィングもしていない。先日のJIROKICHIセッションで1回だけ演奏した曲なん 
ですけど、とりあえずジャケットだけ撮っちゃおうかなぁということになりま
した。

 まず初日23日は、ミーティングっす。
 ジャケットのコンセプトは“ムード歌謡とドゥーワップの中間”。

 そして撮影は、日本ロック写真界を代表する大巨匠・岩岡吾郎!!
 弁当を食いながら、ドサクサにまぎれて依頼してしまいました。

岩「で、ギャラは?」
ノ「たこやきで」
岩「ビールもつけてね」
ノ「オッケーです」
岩「わかった」

 こんなことで交渉成立してよいのか!?

 で、翌日。3人でビシッとジャケット着用(うち2人はステージ衣装を流用)
して撮影しました。本番10分前の廊下で。いい感じのが撮れました。お楽しみ
に。

                     ****************************

 もう何週間も前から、コロちゃんは24日のことを考えてソワソワしていまし
た。
 なぜならば、なんとコロちゃんのご両親がライブを観にいらっしゃるのです
!! 今まで、ほとんどコンサートにいらしたことはないそうなのです。そんな
わけで、コロちゃんにとって大事件なのです。ソワソワソワ。

 コロちゃん、父兄参観日です。

 HKBは「なぁんか、やりたいねぇ」とニヤニヤ。
 たとえば、開演前に30分ギターソロ弾きまくりの“コロチャン・マルムステ
ィーン・コーナー”を作るとか。メンバー紹介の時に、みんなで「コロちゃん
の秘密」をいっこずつ言うとか。ひどい(涙)。あとは、楽屋の隣にある和室
に「佐橋佳幸先生御楽屋」と毛筆で書いた紙を貼って、ライブが終わった後に
メンバー全員が「センセイ、今日はありがとうございました!!」とあいさつに
行くとゆーネタ。もちろんコロちゃんは、ギターを持って座布団10枚敷きの上
に座ってるの。うふふ。

 などなど。
 でも、ちゃんとみんなコロちゃんのご両親に礼儀正しくごあいさつしており
ましたよ。やっぱり常識ある大人ですね。ホッ。コロちゃんも、父兄参観が終
わってホッ。

                     ****************************

 渋谷公会堂のバックステージ廊下には、カーテンのすき間から客席がまるみ
えになるスポットがあるのです。なので、もちろん客席からもまるみえになる
のです。
 で、開演10分前。

「あ、MIPSの米田さんだ!!」

 などと、カーテンの隙間から顔を出して盛り上がっている男がひとり……。
 そのひとの名は……もう、おわかりですね。
 今夜の主役・佐野元春さんでございましたよ。とほほ。
 学芸会で、舞台の袖から「あ、おかーさん来てる!!」と喜んでいる子供状態
です。
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■在庫一掃企画“みんなで歌おう”--------------------------------------

 旅も終わったということで、ツアー中の資料などをあれこれ整理しておりま
したところ。すっかり忘れていた紙きれが1枚、出てまいりました。
 あれは確か福岡サンパレスの楽屋。何かにとり憑かれたように、必死で仕上
げた入魂の1曲。たぶんメンバーも忘れちゃっていると思います。しかし、こ
のまま闇に葬ってしまうのは惜しい。惜しいので、なんとなく発表します。
 みんなもメロディはよく知っていると思います。ま、いわゆる替え歌なので。
 佐野元春も歌った(←つまり公認)、幻の未発表バージョン。
 知っていたら、一緒に歌おう。いや“歌おう”じゃなくて、叫ぼう!!


〜HKB・佐野元春シリーズ第一弾〜

『3杯じゃ足りない』
         作曲・佐野元春
         作詞・HKB with ノージ
         リード・ボーカル センパイ

のれんをくぐるたびに 不思議な気がする
この体中の血が とんこつに変わりそうだ
アキラとKYONの行く店は いつも正しい
だけど たった3杯じゃ足りない
せめて替え玉まで もっともっと
食べたい 食べたーい

1杯めは拙者と自分だけのために
2杯めも拙者と自分だけのために
ずっとすすり続けられるといいな

だけど たった3杯じゃ足りない
せめて替え玉まで もっともっと
食べたい 食べたーい

どんな時でも チャーシューさえあるだけで
拙者は大丈夫さ

大盛りを頼むたび 不思議な気がする
馬並みのドンブリじゃ 満たしきれない
アキラとKYONの行く店は いつも正しい
急ぎすぎちゃいけない
腰をすえて 夜明けまで
いつだって 大丈夫
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■メールください------------------------------------------------------

 いつもメール、ありがとうございます。そして、なかなか個別にはお返事が
出せなくてすみません。いろんな人が、いろんなふうに“佐野元春”や“The 
Hobo King Band”の音楽を受けとめているんだなぁと楽しく読ませていただい
ております。
 ジャスト・セイ・ハローだけでもうれしいので、みなさんの声を聞かせてく
ださいませね。

 ところで、『ものまね王座』でクワマンがやった“佐野元春”ってどーだっ
たの? ものまねされることは名誉なこととゆわれますが、どうなんでしょ。
“The Barn”ツアーでは、舞台監督の岩浅があたしのマネをしやがるので他の
スタッフもみんなマネしやがるようになってプンプンです。でも、確かによく
似ているのでたいそう悔しいです。ちなみに岩浅というのは、オープニングで
ステージ上でレコードをかけに出てくるひとです。

 次回はいよいよ、涙と感動の大阪フェス3デイズの巻。
 お楽しみに!!
 バックナンバーが読めるページも、もうじき公開の予定。しばしお待ちを。


By 能地祐子
    from Nohji's Rock'n Roll Shop
   (http://www.DaDooRonRon.com)


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