03 | Moto's Web Server
1995-1996



 '90年代後半に入ってインターネットは急速に普及し、今や多くのアーティストがホームページを通じて情報発信している。その先駆けとなったのが佐野元春のオフィシャル・ホームページ「Moto's Web Server(MWS)」だ。




 同ページがスタートしたのは1995年のこと。ポストペットはもちろんYahoo! Japanも新聞社のニュースサイトもまだこの世にはなかった時代だ。パソコン通信「ニフティ・サーブ」上で佐野についての情報・意見交換をしていたファンたちが、当時米国で話題になり始めていたインターネットに着目し佐野にコンタクトをとる。佐野自身もインターネットに注目していただけに、早速ミーティングが行われ、同年3月13日の佐野の誕生日に合わせてサイトをオープンした。

 この、ファン有志たちによる自発的なプロジェクトは、MIPS - Motoharu Internet Project Systemsと呼ばれ、今日までサイトの制作と運営を続けている。

 「Moto's Web Server」はその後も常に挑戦的な試みを続ける。1996年12月、日本武道館での「Fruits Punch」公演を逐次デジタルカメラで撮影、それを断続的に掲載する形で手作りのインターネット中継を成功させる。さらに翌97年には幕張メッセにおけるインターネット関連の見本市「NETWORLD + INTEROP 97 TOKYO」に出展する。

 そしてMIPSに後押しされるように、佐野自身もインターネットへの積極的な取り組みを見せる。1998年5月に国内初の有料インターネットライブ“The Underground Live '98”を開催、1999年1月には「僕は愚かな人類の子供だった」を動画などと組み合わせた「デジタル・アートピース」としてネットを通じたノンパッケージ配信でリリースした。

「Moto's Web Server」は、アーティスト側から情報を一方通行で提供するのではなく、ファンが自ら制作に携わりファン同士のコミュニティを大切にするサイトだ。コンサートでは終演直後からファンの感想が続々とページに寄せられる。そのスタンスは、常に新しい試みに挑む姿勢とともに、今なお音楽ファンそしてIT(情報技術)関係者から注目され続けている。


(渡辺智哉)



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