高見広春の処女作『バトル・ロワイアル』は不思議な小説だ。深作欣二監督の映画でも話題になったように、たしかにこれは中学生が殺し合うショッキングな冒険譚でもあるのだが、ただそれだけのエンターテインメントではなく、作者独自の哲学を背景にした無数のメッセージが物語の中に散りばめられている。もし君が佐野元春のファンなら、それらのメッセージから元春のイディオムを感じとることもできるだろう。高見広春が佐野元春から受け継いだもの。それがこの作品を特別なものにしている。「エンターテインメントにこだわりたい」という作者自身の主張に拍手を送り、さらにこの作品が優れた冒険小説であることを評価した上で、敢えて言いたい。『バトル・ロワイアル』は決してそれだけの作品ではない、と。 |

写真:岩瀬陽一 取材協力:太田出版
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