作家の金城一紀氏から「僕の友人の本多孝好君も佐野さんのファンです」と紹介してもらったとき、筆者はすでに本多氏の処女短篇集『MISSING』(双葉社)を読んでいて、表現に対する作者のストイックなまでに真摯な態度に共感していた。それは表現者としての佐野元春とも共通する態度だった。佐野はさまざまなジャンルの表現者たちに影響を与えているが、彼の場合、誰にでも容易に見てとれる表層的な影響よりもむしろ、より深いレヴェルでのアティテュードに関わる影響のほうがはるかに大きいように思える。そういった意味では、本多孝好も佐野元春の精神の正当な継承者のひとりだ。本物の表現者がここにいる。 |
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