今回用意された試作品は2本。1本目は、1996年に作られた古酒をベースにいくつかのお酒がブレンドされたもので、西勝酒造(株)の西村明氏によると「通好み」の仕上がりになっている。そして2本目は、1本目にさらに3年間寝かせた吟醸酒をブレンド、辛みが取れて飲みやすい仕上がりになっているという。
まずは1本目がお猪口に注がれた。
佐 橋 ●もう、いっちゃっていいですか?(笑)
佐 野 ●それではありがたく試飲させていただきます。
一 同 ●(笑)
佐 橋 ●激ウマなんですけど……。
佐 野 ●う〜ん、鼻に抜けていきます。
佐 橋 ●でも、本当にスーっといきますね。
Dr.kyOn●何か、懐かしい味だね。そんなに何十年も飲んでるわけじゃないけど(笑)。でも、何となく昔飲んだ日本酒のような感じがしますね、こんなのだったなぁって。
佐 橋 ●これ、ぬる燗でも良いんじゃないですか?

:::: 昨年の「元春(がんしゅん)」の時も西勝さんは少し
お燗をしても良いのではと仰ってました。
佐 橋 ●実にスモーキーな味。
:::: 「元春(がんしゅん)」が華やかな味わいだったとすると、
「放浪王」は通好みの味わいという方向で、西勝酒造さんは考えてくださってます。
佐 野 ●すっきりと言うのとは対極にある感じですね。旨味がずっと残る感じ。
佐 橋 ●美味しいです。
:::: では、もう一本も比べてみますか?
こちらは3年寝かせた吟醸酒がブレンドされています。
佐 野 ●では吟醸入り、試飲させていただきます。
佐 橋 ●ポップです(笑)、急にポップな感じが。明るい。
佐 野 ●若干酸味が加わった印象ですね。何か、滋賀の青い空が見えてくる。
一 同 ●(笑)
佐 橋 ●良いなぁ、さすが棟梁。
佐 野 ●'96年というのは農作物はどうだったんでしょうか? 豊作だったのか、日照りだったのか。その年のお米ということになりますか。
:::: そうですね。ただ、この'96年の古酒というのはかなり貴重らしくて、
相当良いものらしいんですよ。それで、あまり本数が作れないということなんです。
佐 野 ●だって、'96年の古酒が無尽蔵にあるわけじゃないもんね。
Dr.kyOn●無くなったら終わり(笑)、お酒の場合はね。
:::: この2本からどちらかを選ぶのは難しいですね。
Dr.kyOn●いや、でもこの2本目は明らかに違う細菌(麹)が入ってる感じが……。
一 同 ●(笑)
佐 橋 ●もう、早々と個人的には1本目がGreat! でもこれ、珍しいお酒ですよね。
Dr.kyOn●珍しいのに焦点がはっきりしてるよね、純米酒として。だけど、ちゃんとカラフルな味もする。
佐 橋 ●でも、お酒を普段飲まない人でも「お酒を飲んだな」という気がするのは、2本目の方かな。
Dr.kyOn●でも、何か薄い感じがしない?
佐 橋 ●うん。特に1本目の後にいくと。
Dr.kyOn●そうなんだよね。相対的なものだよね、確実に。2本目だけ飲むと「あっ、旨い!」って言ってると思うんだけど、1本目を飲んだ後だと薄く感じてしまうんだよね。
佐 野 ●1本目は「一直線」という感じがする。
佐 橋 ●ねっ(笑)。「アンプ直」という感じがする。
佐 野 ●2本目はちょっとエフェクターが掛かってる(笑)。
佐 橋 ●ええ、いろいろ繋いじゃったかなってね。
Dr.kyOn●やっぱり1本目は力強いですよ。でも、すごくスーっとしていて繊細で。
佐 野 ●僕はそれほどお酒は飲みませんが、1本目は味が素直でいて深みがあり、僕のようなお酒を飲まない人間にも理解しやすい。2本目は飲んだ瞬間にあちこち旅行しているような、いっぺんにあちこち観光しているような印象がある。
佐 橋 ●ちょっと欲張っちゃったのね。
Dr.kyOn●今は「常温」という飲み方ですけど、1本目の方が表情が深いですね。多分、少し冷やしても燗をしてもいろんな表情が……。2本目はちょっとお化粧した感じがする。
佐 橋 ●化粧系?(笑) kyOnさん、これ一度、燗してみるというのはどうですか?
Dr.kyOn●それいいね。こんな機会でないと出来ない。

佐 野 ●お燗にすると、さらにこのお酒(1本目)の核の部分が増幅されますね。コアの部分がアンプリファイされる。
一 同 ●(笑)
佐 野 ●旨いです!
佐 橋 ●ああ、これはやっぱりぬる燗もOKだったか。
Dr.kyOn●吟醸が入っている(2本目)のは、燗をしない方が良いね。ちょっと強すぎる。
佐 橋 ●確実に1本目ですね。でもね、2本目もすごく美味しいんですけどね。1本目は名前(放浪王)にぴったりな感じがしますね。佐野さんが書いた題字の掠れ具合が、ハスキーな味なので(笑)。
Dr.kyOn●そう、それで決めよう。

Dr.kyOn●これが良いよね?
佐 橋 ●最高ですよ。この点の飛び方とか(笑)。
佐 野 ●象形文字のような(笑)。
古 田 ●これは「放」の文字がワイルドで……。
佐 橋 ●このバランスが最高。
遅れて到着した古田氏も交えてのラベル選考会。それぞれの意見が出た中で無事ラベルも決定した。棟梁の「2本目は滋賀の青い空、1本目は滋賀の奥深い山の重なり」という言葉で、試飲会はお開きになった。その後、彼らの「宴」が続いたことは言うまでもない。
滋賀近江八幡の豊かな自然と、300年の歴史を誇る酒造りの技が醸した深い味わい。H.K.B.結成の1996年に作られた貴重な古酒をベースにした贅沢なお酒「放浪王」。この年末年始、大切な時間にゆっくりと味わっていただきたい逸品、MWS Storeに登場します。
「放浪王」について
「放浪王」は「元春」をさらにグレードアップした酒として設計致しました。基本は熟成八年目の特別本醸造です。ホーボー・キング・バンド結成が96年、同じ年に仕込んだ酒です。八は末広がりに通じ、新春を寿ぎバンドの前途を祝すにはピッタリではないでしょうか。この古酒だけだとヘビーになり過ぎてしまいますので、同種の若めの酒を数種ブレンドしてみました。ひなびた味わいのある辛口酒に仕上がったと思います。ちょっと渋過ぎかと思い、もう1種類、3年熟成の吟醸を入れた派手めのブレンドを用意したのですが、佐橋、Dr.kyOn両酒豪の強力プッシュでこちらに決定しました。確かにこちらの方が当たりは地味ですが懐の深い通好みです。さすがDr.kyOn先輩、エエ勉強させてもらいました。呑み方はぬる燗がオススメです。古酒ベースの枯れた風味が引き立ちます。つまみは塩分の聞いた高蛋白の珍味系「ふなずし、へしこ、くさや、雲丹、このわた等でちびちびと・・・。
西勝酒造では12月初旬より新酒のにごり酒「風花(かざはな)」の出荷を開始します。平安時代の仕込みを復元した本邦唯一の活性酒です。
西勝酒造Web Siteは[こちら]からどうぞ。
西勝酒造(株)は享保二年(1717年)の創業、水郷と近江商人のまち・近江八幡唯一の蔵元。
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