特集=佐野元春『自由の岸辺』が照らし出す現在

行きつくところはいつも同じ -アルバム『自由の岸辺』を聴いた

阪口 誠 (Makoto Sakaguchi)

 詩(のようなもの)を書く身として、そのタイトルに苦戦することが多々ある。瞬時に決まるとかタイトル先行なんて、極稀。

 いつもそばにいるよ  新しくはじめるんだぜ  (「ハッピーエンド」作詞・作曲:佐野元春)

 こう締めくくられる楽曲に「ハッピーエンド」、と名付けるとは! 終わりははじまり、さすがだぜ。先輩!

 さて、前作から10ヶ月で届けられた新作『自由の岸辺』は、2011年にリリースされた『月と専制君主』以来のセルフ・カヴァー・シリーズの第2弾。

 しかしながら、佐野元春本人によると、今回はカヴァーというよりはセルフ・アップデートなんだそうだ。

 どっちでもいいよw

 アルバム『自由の岸辺』全11曲のトップバッターは冒頭の「ハッピーエンド」で、1992年のアルバムの『Sweet16』に収められた楽曲。

 “新しくはじめるんだぜ”

 今の気持ちで、今の解釈で、今の声で歌われた以前の曲たち。それらはまさにアップデートされていて、なぜ、今回はそう言ったのかがポイントではなかろうか?

 現在、佐野先輩は二つのバンドを“掛けもち”しているが、今回、新作アルバムは同級生(同年代という意味で)ザ・ホーボー・キング・バンドと。

 楽曲としては既発のものばかりで、そう言った意味では真新しさはないのだけど、大胆なアレンジのチェンジや、時代の流れに合わせた一部歌詞の変更により、まさしく、新しくはじまってるんだぜ。

 もう一つのザ・コヨーテ・バンドとのアグレッシヴなライヴとは少し趣を変えた、近年のビルボード・ライヴでの演奏は僕も大好きだ。このビルボード・ライヴで得た手ごたえこそが、今回アルバムに繋がっているのだろう。

 この『自由の岸辺』アルバムも僕のアルバムの聴き方の例外に漏れず、まずはタイトル・ナンバーから。以前、2、3度は聴いたことのあるオリジナルはあまり馴染みがないけれど、こっちの方が好きだなぁ。

 そして曲順を見てみると、うん、やっぱりライヴで、と考えてみるとこの順番だなと思うけれど、佐野先輩本人の真意はどうか分からない。

 いつだって真意は推測とは違うww

 あっ、そうか! 新・佐野元春になったから、カヴァーではなくてアップデートなのか!w

 要は、音楽を聴く時は楽曲のバックボーンがどうだとか小難しいこと考えずに聴けと。楽しむこと、感じることこそが大事なのだから。