ハートランドからの手紙#117
掲載時:2000年新年
掲載場所:MWS
掲載タイトル:「MWS開設5周年に向けて」

新年あけましておめでとうございます。
佐野元春です。

「僕は小さい。けれど革命する」

こんな一節が自分の曲にあります。このMWSを運営するボランティア・チームMIPSを思うとき、いつもこの一節が心に浮かびます。

このフォーラムのプログラムはMIPSの今野英明さんによって書かれた。この種の掲示板システムは数あるけれど、僕はこれがベストだと思う。すばらしいメディア・ツールだ。

このプログラムはちょうどインターネットが民間に開放された4年も前に書かれ、今も休みなく変わらず働きつづけている。めまぐるしい世界にあってこれはまったくの驚きだ。

目先の便利さを追いもとめる技術ではなく人の根本を支える技術がある。
目先の欲望を充たしてくれる技術ではなく人の根本を変える技術がある。
MIPSは音楽のビット配信なんてまだ誰も口にしていない頃からそのことに気づいていた。

僕らのつながりはこうした技術によっていきいきとさせることができている。

一方、その技術をより輝かしいものとするのは人の心だろう。インターネットを通じて人とつながることのうれしさを知った人もいるだろうし、そのむずかしさに頭を悩ませた人もいると思う。MWSが始まって4年、この間このフォーラムにかかわった人はリードオンリーの人も含めれば相当な数に及ぶ。僕の音楽を聞いてくれる方の幅が広いこともあって、ここには世代や性別、なりわいを超えてじつに多くの方が集っている。そのぶん交換する知恵の数も多くまた深いのだろう。

MWSのスタイルは国内においては稀なケースといえる。たぶんレーベルやマネジメントが主導するアーティスト・サイトではこの景色を実現できなかったと思う。このフォーラムに書きこまれる言葉の熱心さを見れば、MIPSとともに、参加する人たちがみんなで支え、みんなが大事に作っているコミュニティなのだと実感できる。ちょうどディランやグレイトフル・デッドのサイバー・コミュニティのように。

それがいいとか悪いという話ではなく、僕はその賢明さををとても誇りに思います。

運営・制作にあたってくれているwebmasterの米田さん、遠藤さんはじめ、道向さん、今井さん、森本さん、香川さん、戸山さん、コヤマさん。どうもありがとう。

その昔、MIPSは自前のサーバーでまだブラウザに日本語が走らない頃から悪戦苦闘の末このサイトをたちあげ、持ちよった携帯コンピュータで国内初のインターネット・ライブを実現させた。歴史の始まりだった。MWSはまもなく5周年目を迎える。

MIPSはMWSコミュニティを運営するにあたり制作・運営をヘルプしてくれる才能ある新しい個性と出会いたいと願っている。もし、君が若く、力強く、ロックンロールとコンピュータ・サイエンスと「世界をデザインする」ことに興味があって、人生においてはユーモアこそが最大の武器だと思っている人がいたら、ぜひMIPSのwebmaster宛てまでコンタクトをとってください。

p.s
今年デビュー20周年を迎えました。20周年とタイプしたところ、20執念と変換されてドキっとしてしまいましたがそれはどうでもいい。

今月はアニバーサリーアルバムの発表とアニバーサリーライブのスタートで、またみなさんと会えることをうれしく思っています。

これまでのそしてこれからの応援に感謝します。

どうもありがとう。

佐野元春
2000年元旦


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