ハートランドからの手紙#195
掲載時:2006年9月
掲載場所:ライブDVD「星の下 路の上」ブックレット
掲載タイトル:ロードには始まりがあり、終わりがある

謝辞

 このパッケージを手にしてくれてありがとう。「星の下 路の上」ツアーの最終公演となった東京国際フォーラムでのコンサート。レコーディング・アーティストとして26年、バンド結成10年目という節目でのライブ。今回、そのコンサートの始まりから終わりまでを記録したディスクが、ファンの皆さんの手元に届くことになった。一夜のライブをノーカットでリリースするのはこれが初めてのことだ。

 僕らバンドは3時間あまりの舞台で集中力が途切れることなく、いつもどおり演奏を楽しみ、ロックして、ロールした。他のライブと違ったのはこれがツアーの最終公演だということだ。そして最終公演ではいつも特別な気持ちになる。「ニュー・エイジ」の唄いだしで客席に無数の風船と星が舞った。不思議なことだが僕にはそれがよくある舞台演出の一部とは思えなかった。それは痛みを伴った現実だった。一瞬でいいので、自分の唄が時代と強く共振してほしいと願った。

 このツアーが終わればまたいつもの日常に戻る。しかし考えてみれば、実は自分にとってはこの舞台こそが現実なのかもしれないとも思う。来年もきっとここに戻ってくるだろう。ロードには始まりがあり、終わりがある。

2006年9月佐野元春


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