ハートランドからの手紙#96
掲載時:96年7月
掲載場所:ぴあ
掲載タイトル:イベント「THIS! - New Attitude For Japanese R&R」寄せて

1996年、東京。
電気的な、あるいは非電気的な放浪者たちが
街から溢れだしてくる。

新しい流れを見ている。
それは、何度か見てきたかのようではあるが
全く新しい流れのように見える。

都合よく管理されがちな世代、
あるいは、見捨てられがちな世代の叛乱が
静かに、陽気に、優雅に始まっている。

彼らは、XでもYでもZでもない。
彼らは、名を与えられた端から、居心地の悪さを感じている。
彼らは、誰よりも、世間と折り合いがついていないことを知っている。
彼らは、新しい態度で「旅に出る理由」を探している。
彼らは、新しい方法で「グッド・ラックよりマシンガン」を手に入れたがっている。

彼らに見えている情景は、吐き気のするくらいうんざりした果実。
ダブつき気味のシャツから、涙をこぼしている。
彼らに見えている情景は、至福の宝石に彩られた痙攣。
信じられないものを、信じようとしている。

オレは二番目の扉を開ける鍵を持っている。
もしオマエが三番目の扉を開ける鍵を持っているなら、交換してもいい。
オレは無条件に、無責任にオマエの背中を後押ししてしまいたい。

オルタネイティブでいること、とは、すなわち
野心を温存する状態を示す。

笑い飛ばせ。
野心をもって、笑い飛ばせ。

6/28/96
佐野元春


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