1980年の春、ひとりの若者の叫び声がぬるま湯の中で惰眠を貪っていたニューミュージック・シーンの静寂を切り裂いた。
ボブ・ディランの歌唱法をフルスロットルで加速化したようなヴォーカル・スタイル、ラディカルなパンク・ロックよりもさらに性急なビート、若い都市生活者のライフ・スタイルをモチーフにした歌詞、ユニークな言語感覚など、さまざまな表現のフィールドにおける彼の斬新なアプローチは奇妙な鎖国状態に陥っていた“日本語のロック”にリアルなロックンロールのダイナミズムを持ち込んだ。
現在のJ-POPはここから始まったと言っても決して過言ではない空前絶後のファースト・シングル。当時のキッズをノックアウトしたその衝撃は『The 20th Anniversary Edition』に収録された「アンジェリーナ('99 mix version)」で追体験できる。
若き佐野元春のがむしゃらな勢いは他の追随を許さない。もしも23歳の彼が2000年1月にデビューする新人アーティストのひとりだとしたら、同時にデビューする他の若者たちはきっと桁外れのパワーの前で尻込みすることだろう。