10 | 中野サンプラザでのラストステージ 「グッド・バイ
から始めよう」
1982 -1983



 佐野元春が1年間に渡るニューヨーク行きを決めたのは1982年の夏、「ロックンロール・ナイト・ツアー」が始まる直前というときだった。彼はその秋リリースする予定だった「スターダスト・キッズ」の次のシングルとして、「グッドバイからはじめよう」という曲をレコーディングし、リリースすることに決める。

 デビュー・シングル「アンジェリーナ」から数えて10枚目のシングル曲。それまでの軽快なロックンロールとは打ってかわり、美しい旋律を持つセンチメンタルなバラード調の曲だった。

 1983年1月、佐野はニューヨークに旅立つ前のファンへの“別れの挨拶”という意味を含んだシングル「グッドバイからはじめよう」を録音した。1月13日、長野市から約30分ほど車を飛ばしたところにある山間の別荘地で撮影したジャケット写真の中で、佐野はコートのポケットにアンディ・ウォーホルが主宰する「インタヴュー」誌を突っ込み、しばらくニューヨークに行ってしまうことをほのめかしていた。


 この曲における佐野の真意は“終わりは始まり”という一節で語られている。そして、この「グッドバイからはじめよう」は「ロックンロール・ナイト・スペシャル・ツアー」の最終日、中野サンプラザでのコンサートのアンコールで佐野のピアノの弾き語りによって披露された。この模様は、後にリリースされた佐野元春 ウィズ・ザ・ハートランドの3枚組みライブ・アンソロジー「ゴールデン・リング」で聞くことができる。

 多くの全国ファンたちの嘆きを後に、その2ヶ月後、彼はニューヨークへと出発する。

(下村 誠)



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