11 | 初のチャートNo1アルバム『ノー・ダメージ』
1982 -1983



 約1年にわたるニューヨーク生活へ旅立つ直前の1983年4月に発表された佐野元春初のコンピレーション・アルバム。

『Back To The Street』、『Heart Beat』から2曲ずつ、『SOMEDAY』から3曲、『ナイアガラ・トライアングルvol.2』から2曲、残り5曲はオリジナル・アルバムには未収録のアナログ7インチのAB面曲となっているため“初のベスト・アルバム”と形容されてしまうことが多いが、そのコンセプチュアルな内容から『No Damage』を既存のベスト・アルバムと捉えてはいけない。

 A面は“Boys' Life Side”、B面が“Girls' Life Side”と色分けされていることに加え、“パーティ・アルバム”というコンセプトのもとに構成されたその内容は、4枚目のオリジナル・アルバムと言っていいほどだった。

 特に“Girls' Life Side”のトップを飾る「アンジェリーナ」から「So Young」〜「Sugartime」〜「彼女はデリケート」へと続く4曲は、これ以上は考えられないほどよく練られた曲順だろう。

 1年という長い間、日本を離れる佐野元春がファンに残したプレゼントだった『No Damage』は、本人にとっては記念すべき初のNo.1アルバムとなった。佐野はすでにこのときNYに旅立っており、国内で空前の佐野元春ブームが起こりつつあることを本人は知らなかった。

『No Damage』。このアルバムから新しく彼の虜となったファンにとっては“もっと聴きたい”気持ちを残した、ほんの少しだけ辛い気分にさせるアルバムだったと言えるかもしれない。

(池田聡子)



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