映画「No Damage」('83) の16mmフィルムがついに発掘!
2011年08月10日
今回のスペシャルボックスでの発掘作業が続く中、最大のニュースが舞い込んできた。
それは、1983年に製作された映画「No Damage」の一部始終が収められた16mmフィルムが発見されたのだ。この「No Damage」は、'82〜'83年のツアー「Rock'n Roll Night」ツアーの追加公演として開催された「Rock'n Roll Night Special」の'83年2月11日の大阪フェスティバルホールから3月18日の中野サンプラザまでを収めたライブ・ドキュメント映画である。当時、このフィルムは全国のコンサートホールを巡った後に所在がわからなくなっていたのだが、丹念な発掘作業の中、ついに見つかった。
1980年中盤からは民生用ビデオカメラが普及したことで、その後は多くの映像資料が残されたが、1983年当時の撮影は映画製作と同様の16mmフィルムで行なわれた。7台ものカメラで撮影されたフィルムは、すべて見続けると3日間は要するほどの膨大な量。これを70分の作品に編集し、吉野金次氏がミックスを手がけたサウンドが定着された、非常に貴重なフィルムである。
こうして完成したフィルムは当時では珍しいフィルム・コンサートの形式で、'83年7月18日中野サンプラザを皮切りに全国各地のホールで上映された。その後、各レコード会社はビデオ機材の普及に合わせて、ミュージック・ビデオやライブビデオを用いたビデオ・コンサートを数多く行う事になる。
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さて、この「No Damage」は、全国を熱狂に巻き込んだ「Rock'n Roll Night」ツアーのライブシーン(一部はDVD「TRUTH」にも収録)をメインに、元春が扮するジョン・レノンとヨーコの「ベッド・イン」インタビューのパロディや「グッドバイからはじめよう」のTVスポット収録風景などが収められている。このシーンは、当時このフィルム・コンサートに参加したファンしか観たことがないだろう。今回、どのような形でこの作品が収録されるか、とても楽しみだ。
最後に、もうひとつの発掘されたアイテムを。
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このカードは、先述の「No Damage」のフィルム・コンサート会場で配布されたメッセージ・カードである。映画公開時には既にニューヨークに旅立ち、日本にはいなかった元春が、直筆のカードでファンに近況を知らせる内容となっている。
18世紀のイギリスの哲学者、ジョゼフ・プリーストリーの切手にサングラスを掛けさせ「I'm just a R&R Prisoner」と書かれた落書きが、いかにも元春らしいユーモアを感じさせる。
ちょうどこの1983年春は、4月21日に発売された同名のベスト・アルバムが、オリコンのアルバムチャート1位を獲得していた。
'80年代 元春レイディオショーの収録風景
2011年07月12日
今回の発掘写真は、9枚のポラロイド写真。これは、当時放送されていた、「元春レイディオ・ショー」での収録風景のスナップショットだ。
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真ん中の写真は、当時彼が、愛用していたボストンフレームの眼鏡がDJマイクにかけられている。そして、下段の中央写真には、手書きで、「Motoharu's To Mr.Iwaoka 1985. 9/2」と書かれている。
『元春レイディオ・ショー』は、1981年4月から、毎週月曜日、NHK-FMでオンエアされ、1987年3月までの6年間続いた。それから、22年の時を経て、2009年3月31日に復活。現在も毎週火曜日23時から、NHK-FMで放送されており、2011年4月で丸2年目を迎えた。
さて、写真の話に戻ると、DJマイクの前でポーズを取る彼のデスクの上には当時、全国のリスナーから寄せられたリクエストはがきとオンエアーに用意されたレコードが並べられている。
1985年は、まだ、アナログレコードが主流で、CDでのリリースはまだ始まったばかりの時代。彼が手に持っているのも、アナログ・シングル盤だ。(真ん中に大きな穴が開いているので、ドーナツ盤とも呼ばれた)
デスクの上には、OMD、ジョン・クーガー・メレンキャンプ、トーマス・ドルビー、ジョン・キャファティ&ザ・ビーバー・ブラウン・バンドなどのレコードが並べられている。
これは、ポラロイドに書かれた日付となっている、1985年9月2日に放送された曲たち。この日のプレイリストは、以下の通り。
【1985年9月2日のプレイリスト】「Billboard Hot 100」特集
- Dancing In The Street : Mick Jagger & David Bowie
- Test of Time : The Romantics
- There Must Be an Angel (Playing with My Heart) : Eurythmics
- So in Love : OMD(Orchestral Manoeuvres in the Dark)
- Be Near Me : ABC
- The Way You Do the Things You Do : Daryl Hall and John Oates
- C-I-T-Y : John Cafferty & The Beaver Brown Band
- Lonely Ol' Night : John Cougar Mellencamp
- Every Step of the Way : John Waite
- Tonight It's You : Cheap Trick
- Cherish : Kool & The Gang
最後に、このポラロイドに書かれた「To Mr.Iwaoka」とは、カメラマン、岩岡吾郎氏のことである。
岩岡氏は、佐野元春のファンであれば、彼の名前を知らない人はいないであろう。1980年から佐野元春のオフィシャル・カメラマンとして活躍され、2003年2月、56歳という若さで亡くなられた。
下記の「All access free - 友人 岩岡吾郎氏に捧げて」は、Moto's Web Serverの「Visitors」20周年特集サイトに「ハートランドからの手紙 #169」として寄せられた、彼からの追悼文である。
「All access free - どのエリアも出入自由」と付けられたタイトルの通り、彼が岩岡氏に対して、絶対的な信頼をおいていたことが分かる。今回のスペシャルBOXでも、岩岡氏の貴重な写真が掲載されることとなるだろう。
「
All access free - 友人 岩岡吾郎氏に捧げて」
Moto's Web Server「
Motoharu Radio Show」サイト
「
元春レイディオ・ショー」
「
元春レイディオ・ショー」レギュラー放送復活」
詩集『ハートビート』を知ってますか?
2011年06月18日
今から30年前の1981年2月、セカンドアルバム『HEART BEAT』リリース時に非売品のプロモーショングッズとして制作された、今では入手困難の詩集『ハートビート』。現在進んでいる制作作業の中で、傷ひとつない当時の状態ものが発掘された。この冊子を知らないという方もいると思うので、その写真とともに簡単に解説しましょう。
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1983年の『THIS』Vol.4(ソニーマガジンズ刊)と1985年の『エレクトリックガーデン』(小学館刊)に詩の一部は再録されたが、この詩集『ハートビート』がオリジナル版だ。
目次を抜粋してみよう。
- Introduction
- OWN MY SONGS
- DO WHAT YOU LIKE(勝手にしなよ)
- ガラスのジェネレーション
- IT'S ALRIGHT
- 情けない週末
- HEARTBEAT(小さなカサノバとナイチンゲールのバラッド)
- モーニングレタス 10月21日
- <Climax>にて
- スピード
- Pretty Little Eyes
- バスルーム
- 彼女はデリケート
- 私の流儀で踊らせて
- The Same Ol' Morning
- モノローグは陽気に
- 夜明けと勘違いして寝言をいう
- 恋の片道キップ
- シジフォス24/1980
- グラス越しに見せてくれたママのより目
- マウスピースをどこかに隠してしまったお茶目なティンカーベル
- TVセット しかももっとモダンな
- Landscope
- Sun Childは僕の友達
- Two in Brazil
- 今夜証明されます
- 僕の上着のポケットに顔をつっこんでいるウェートレス
- 著者について
- 解説/佐野元春探偵を知っていますか? 糸井重里
この中に収録されている歌詞はもちろんのこと、詩、イラスト、デザインは全て、彼の手によるものである。
当時のプロモーションといえば、アルバムのためのプロモーション、例えば、ポスターやステッカーなどのグッズ配布が主に行なわれていたが、アーティストそのもののプロモーションが行なわれることは、ほとんど無かった。
その状況に対し、彼は、詩人としての側面も併せ持つ、ミュージシャンとして、歌詞とビート詩、散文詩を掲載した、この詩集を発表した。
先述の「Now&Then」でも書かれているが、『HEART BEAT』に収録されている『君をさがしている〜朝がくるまで〜』の歌詞は、この詩集に収録されている散文詩「シジフォス24/1980」が原型となっている。
後に1988年に発表される、長編散文詩『エーテルのための序章』や『スポークンワーズ』と言った、佐野元春の新たなアートパフォーマンスへと繋がる第一歩が、この詩集『ハートビート』だったのかもしれない。
なお、この本の解説はMoto's Web Serverの「Now & Then」に書かれているので、そちらをご覧頂きたい。
佐野元春スペシャルBOX製作委員会より
2011年06月07日
佐野元春スペシャルBOX製作委員会より、商品発売に関するお知らせが届きましたので掲載します。
本年2月下旬に発売時期延長のご案内を差し上げて以降、皆様には、発売時期・作業状況等のご案内が大幅に遅れておりましたことを改めて、お詫び申し上げます。
現在、このプロダクツにご期待するご意見を、数多くの皆様から頂いております。
30年間の膨大な素材は、既発素材の他に、新たに発見(発掘)された素材が数多く加わったことで、デジタル・アーカイブ化作業及び、各素材の確認・整理作業の量が大幅に増えたこと、また、大震災の影響が作業に及んだこともあり、当初の予定をはるかに超える時間を要することとなりました。
しかしながら、この作業も順調に進行し、本格的な制作作業に取り掛かっております。最終的に、多くの未商品化・未発表素材をできる限り、このプロダクツに反映したいと考えています。
発売日につきましては、9月〜10月発売を想定しつつ、ツアーファイナルである東京公演の開催日に合わせて公開できるよう、現在、調整中です。
貴重なアーカイブ素材の一端は、「制作レポート・ブログ」を通じて随時公開し、商品に関するトピックスと併せて、ご案内していきますので、どうぞ、ご期待下さい。
2011年6月8日
佐野元春スペシャルBOX製作委員会
商品に関する詳しい情報は、発売元のユーキャン通販ショップをご覧ください。
『Welcome To THE HEARTLAND Tour』のレア写真、
見つかりました
2011年05月26日
写真の選出作業が連日、続いています。貴重な写真が発見される度に、一点一点、見入ってしまうのが、この作業の難点・・・。
といいつつも、新たに見つかったレアな写真をご紹介しましょう。今回は、1982年に行なわれた『Welcome To THE HEARTLAND Tour』から発掘されたフォト。
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まさに、このツアーが元春とTHE HEARTLANDによる初の全国ツアー。1月16日大阪厚生年金会館中ホールを皮切りに7月17日松本社会文化会館まで、全41公演を行なった。
ちなみに、4月28日横浜教育会館で行なわれたセットリストは、
- Welcome To The Heartland
- 彼女はデリケート
- ビートでジャンプ
- ハッピーマン
- ナイトライフ
- ダウンタウンボーイ
- マンハッタンブリッヂにたたずんで
- ドゥ・ホワット・ユー・ライク(勝手にしなよ)
- 二人のバースディ
- 情けない週末
- バッドガール
- シュガータイム
- ガラスのジェネレーション
- ヴァニティ・ファクトリー
- 君をさがしている(朝が来るまで)
- ハートビート(小さなカサノバと街のナイチンゲールのバラッド)
- 悲しきレイディオ
お気づきのとおり、この公演では「SOMEDAY」は演奏されていない。このツアー真っ只中の3月に『ナイアガラ・トライアングルVol.2』、5月に3rd.アルバム『サムデイ』が発売されるという、まさに元春ブレイク前夜ともいえるツアーでした。
この写真が私たちに伝えるのは、アグレッシヴにステージングする姿と充実感に溢れた元春の表情。写真の隅々から発せられるエネルギーはとても印象的です。
今回の全集ボックスでは、こうして新たに発掘されたレアフォトが満載になる予定なので、今後の展開にご期待ください。
『NO DAMAGE』フォトセッションの未公開写真を発掘!
2011年05月12日
ゴールデンウィークの間も写真や映像など膨大な素材整理が続いていますが、そこで大変貴重なフォトが発見されたので、このブログで早速紹介しましょう。
皆さんのお手元に『NO DAMAGE〜14のありふれたチャイム達〜』(1983年作品)があれば、そのジャケットを見てみてください。『NO DAMAGE』のアートワークは、フロントカバー・サイド(BOYS SIDE)がブルー。インサイド・カバー(GIRLS SIDE)がピンクにデザインされ、「路上でタイプライターを打つ元春」や「バスタブの中で水泳キャンプとメガネをかけている元春」など、様々な写真がコラージュされてます。
『NO DAMAGE』のアートワーク用撮影では、使用された写真以外にも様々なカットがシューティングされたそうです。そして約30年の時を経て、アナザーショットが発掘されました!
『NO DAMAGE』のジャケット裏面には「チェ・ゲバラの写真の前を横切る元春」の姿がコラージュされていますが、今回見つかったアナザーショットがこれ。
撮影:渡辺真也
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当時の元春作品の中にある「ポップスというオブラートの中に隠されている攻撃性」をイメージさせる、特に印象的な一枚。
今プロジェクトでは、このような写真が他にも「発掘」されています。今後もこのような写真を随時レポートしていくので、お楽しみに。
予約特典「元春愛用ギター“実物大”ポスター」と「ギターピック」にまつわるあれこれ
2011年04月28日
「佐野元春全集」先行予約特典として用意されているのが、元春が愛用する赤いストラトキャスターモデルの“実物大”両面ポスターと、特製ギターピック(2枚)。特にポスターはギターフリークのみならず、すべての元春ファンにオススメしたい特典なのです。
ロック音楽と楽器、とくにギターは切っても切れない関係にあり、さまざまなロック史の中で「楽器に歴史あり」とも言える象徴的なシンボルとして語られてきました。元春の赤いギターもそのひとつと数えられるくらい歴史と伝説が凝縮されています。
デビュー時より、ライヴやレコーディングで愛用している「キャンディ・アップル・レッド(リンゴ飴のような赤)」のフェンダー・ストラトキャスターは、元春のトレードマークであり、彼の愛するバディ・ホリーが愛用したことで有名となったモデル。今回の実物大ポスター制作の為に表と裏をそれぞれ撮影し印刷がされています。
まず目に入るのが、本体に刻まれた傷。30年もの間、全国津々浦々を元春と一緒にロードし、ステージでは激しいアクションで鳴らされてきたギターなだけに、その傷は勲章そのものであり、年輪のように刻まれています。特にギターの裏面、ストラトキャスターの特徴でもある腰に当たる部分が曲線的に加工されている箇所は、ベルトのバックルが擦れる毎に削られたためか、塗装が剥げ、木が剥き出しになっています。その様子を見ているだけで、元春のステージアクションが脳裏に蘇ってきます。
そして、ギターピックは元春が使用しているフェンダー・ミディアムピックに、30周年記念のオリジナルデザインを施した、2種のオリジナルデザイン。ひとつは「元春のシルエットを施した」バージョンと「30th Anniversary」と「BEAT GOES ON」の文字がプリントされたバージョン。こちらも元春ファンには欠かせないアクセサリになりそうです。
「佐野元春全集」制作ブログレポートがスタート!
2011年04月28日
昨年の秋頃からスタートした「佐野元春全集」プロジェクト。
CD、DVD、BOOK、それぞれの制作を始めるにあたり、まずは素材集めからスタートしました。
30年間という時間を遡りながら、写真や映像などを調査し始めたところ、その膨大さと貴重さに圧倒されたのです。
例えば『Back To The Street』のジャケット撮影セッションで撮られた、アルバムジャケットとは別テイクの写真であるとか、未公開のライブ映像など「お宝」と言う以上に貴重な資料の数々。
しかもこれらは、ポジや紙焼きであったり、16mmフィルムであったりするわけです。言わずもがな、現在のプロダクト制作においてはデジタル素材をデスクトップ上で制作構築していきます。
過去のアナログ素材もデジタル化されれば、印刷物やDVDのほかにもネットでの公開や、デジタル書籍といった将来のプロダクトにも利用も可能になる…。
そこで、意を決して「まずは佐野元春30年間の活動を一度すべてデジタルにトランスファーし、完全に体系化されたデータベースを作ろう」という事になりました。
これからしばらくの期間、全集がどのような内容になっていくかを伝えていきましょう。