ハートランドからの手紙#60 |
掲載時:93年 掲載場所:「スナフキン」宣伝用チラシ |
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アルケディアの丘で洗濯の準備をする、一角獣がミシンの縫い目を気にしながら咳ばらいをすると、血色のいい郵便配達人が「ああ、この家もまたもうまもなく売りにだされるのだな」と自分のポケットから走り書きのような何かをとりだし、オレンジ色の犬が3回吠ると郵便配達人は靴についた泥を払いながらまもなく日が暮れてゆくのを感じていた。1時間前に会った40代の婦人がそのあまりにもどうどうとした美しさを見せつけていたので郵便配達人の記憶は分解し、拡散し、溶解し、分裂し、解体した。行き場をなくした一角獣は郵便配達人の脳味噌の断片を拾いあげ、哀しいというのではなくもっと複雑にこんがらがった深い徒労感に近い感情にくるまれながら誰にも聞き取れない特別な声で歌を唄いだした。その声はあたり一帯、谷中に響き渡り、 やがてひまわり畑にまで届こうとしていたので、僕は...。 こんにちは、スナフキンの愛聴者のみなさん。彼らが近くの街に来るようなことがあれば会いに行ってください。いい人たちです。 注:スナフキン-音楽評論家、下村誠率いるバンドの名前 |
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