ハートランドからの手紙#62 |
掲載時:93年9月 掲載場所:「ザ・サークル」宣伝用パンフレット 掲載場所:「佐野元春をめぐるいくつかの輪のなかで」(ぴあ) |
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ここ数日間僕は自分がなぜロックンロール音楽を続けているか、という問いにこれといった答えも見つからないまま漠然と過ごしていた。ある日、自分のレコード棚を整理していると僕の好きな60年代のロックンロールスター、Dionのレコードを見つけた。古ぼけたレコードジャケットからレコードを取り出してしばらく聞いていなかった彼の唄う'Baby,I'm in the mood for you'に針を落とし2-3度となくその曲を聞いた。 そうしているうちにある雑誌で読んだDionのこんな言葉を思いだした。 「ロックンロールをしばらくやってきた者には5つのチョイスがあると思う。死ぬこと、精力を使い果たすこと、100%ショウビジネスに浸り込むこと、ショウビズの世界から完全に足を洗うこと、それと、この音楽の力強さに気づくことさ。ロックンロールは深い情熱や本物の考え方とコミューニケーションを持ち、そのそれぞれの部分を 成長させていくことのできる音楽なんだ。」 今回このアルバムで僕は幸運にも、イギリスのR&B / Jazzシンガーでもあり最高のオルガン・プレーヤーでもあるジョージィ・フェイム氏と共演する機会を持った。どんなにすばらしい演奏と唄を聞かせてくれたかはレコードを聞いてもらうことにして、ここではセッション後、僕から申しこんだ彼へのインタビューを掲載したいと思う。専門的な話題が多いので発表するのをためらったが、このインタビューのなかで語られているジョージィ・フェイム氏の経験と言葉が、どんなに僕を勇気づけ、またどんなにロックンロール音楽を続けることの意味を明快に示してくれたか、それを賢明なリスナーにも伝えられたら、という希望もあって掲載を決めた。インタビューにはジョー ジィ・フェイム氏の音楽をよく理解している、友人の塚田千春君も同席してくれた。ジョージィ・フェイム氏を目の前にして、聞きたいことを山ほども抱えてただうろたえている僕をきちんと着席させてくれたのは彼だ。 |
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