デビュー・アルバム『Back To The Street』(1980) のフロント・カバー。モノクロのその写真では、異国の街角を思わせるブティックの階段から、当時23才の佐野元春が通りの向こうをのぞき込んでいる。このカバー・フォトは佐野が多感な十代を過ごした横浜で撮影された。そしてその舞台となった場所が「赤い靴」である。
当時「赤い靴」は、神奈川県横浜市山下町、山下公園に隣接した神奈川県民ホールの裏手にあった。フロント・カバーの舞台となったことでたちまち知られるようになった「赤い靴」には、全国からファンが訪れ、横浜の観光ガイドには「佐野元春発祥の地」と紹介されたほどだった。
店内には、理解ある店主のはからいによってメッセージ帳が用意され、長年にわたってファンの想いが書き綴られたその記録は、店主によって大切に保管され今でも閲覧することができる。
「赤い靴」は、1996年2月、区画整理の為に移転。現在は「ヨコハマ猫の美術館」という店名で同市中区山手町にて営業を続けている。店内には、今なおメッセージ帳に想いを綴る全国からのファンの姿が絶えない。