03 | 佐野元春とTVコマーシャル
1982 -1983



 80年代前半、佐野は音楽と映像のコラボレーションの可能性について誰よりも早く気づいていた。

 1983年は、米国のケーブルネットワークであるMTVがスタートし、「ミュージック・クリップ」がまもなく日本に輸入されようとしていた時期だ。そのMTVが日本のメディア・シーンに認知されはじめる少し前の1982年、国内ではいっぷう変わったコマーシャル・フィルムが流れていた。

 ブラウン管の中には2人の佐野元春。カジュアルな佐野とスーツを決め込んだ気取った佐野。その二人が光の玉をキャッチボールしている15秒のイメージ。シングル「スターダスト・キッズ」のプロモーション用に制作されたコマーシャル・フィルムである。 制作にあたっては佐野自らが発案、ストーリーと絵コンテを描き、撮影された。

 今でこそシングル曲のプロモーションにTV CFは多く活用されているが、当時国内においてこの「スターダスト・キッズ」のTV CFは前例のないできごとだった。放送エリアが限られていたため大衆にアピールするまでには至らなかったが、シングルのプロモーションにTV CFを使った初めてのケースとなった。

 翌年1983年、佐野がニューヨークに旅立つ直前にリリースされたシングル「グッドバイからはじめよう」でも「スターダスト・キッズ」同様、15秒TV CFが制作され放送された。

 この2本のTV CFはライブビデオ「Truth'80〜'84」に収録されている。また、同ビデオの中では「グッドバイからはじめよう」のCF撮影時の貴重なメイキング・シーンを見ることが出来る。

(高野ヒロシ)



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